エニアグラムで知るモチベーションの源泉:自分とチームのやる気を高めるヒント
エニアグラムで知るモチベーションの源泉:自分とチームのやる気を高めるヒント
仕事や学習、日々の生活において、モチベーションは私たちの行動を左右する大切な要素です。しかし、何にやる気を感じるのか、何がやる気を失わせるのかは、人によって大きく異なります。この違いを理解することは、自分自身のパフォーマンスを高めるだけでなく、チームで協力して目標を達成するためにも非常に役立ちます。
エニアグラムは、単なる性格診断ではなく、私たちが世界をどのように捉え、何に価値を置き、何によって突き動かされるのかという「動機」に焦点を当てるツールです。エニアグラムの視点からモチベーションの源泉を理解することで、なぜ自分はある状況で意欲的になれるのか、あるいはなぜ同僚とは違う動機で動いているのか、その理由が見えてくるでしょう。
この記事では、エニアグラムの9つのタイプそれぞれが、どのようなモチベーションの源泉を持っているのかを解説します。そして、その知識をどのように活かし、自分自身のモチベーションを管理し、さらにチームメンバーのやる気を引き出すための具体的なヒントをご紹介します。エニアグラムを通じて、自分を知り、他者への理解を深めることで、より「楽に」やる気を維持し、チームとの関係を円滑にする手助けとなれば幸いです。
エニアグラム タイプ別 モチベーションの源泉
エニアグラムでは、9つのタイプそれぞれが、異なる根本的な恐れと欲求を持っています。これが、彼らを突き動かすモチベーションの源泉となります。ここでは、各タイプの主なモチベーションの傾向と、やる気を維持・向上させる要素、そしてやる気を失いやすい状況について解説します。
タイプ1:改革する人(The Reformer)
- モチベーションの源泉: 正しさ、完全さ、向上、倫理観。
- やる気を維持・向上させるもの: 物事が正しく行われていると感じられること、改善の機会、質の高い仕事、責任を持って物事を成し遂げること。
- やる気を失うもの: 不正、間違い、だらしなさ、非効率、批判されること。
- 特徴: 自分にも他者にも厳しく、常に物事を「あるべき姿」に近づけようと努力します。倫理的で principled(主義に基づいた)であることに強い価値を置きます。
タイプ2:助ける人(The Helper)
- モチベーションの源泉: 愛され、必要とされ、感謝されること、人との繋がり。
- やる気を維持・向上させるもの: 他者に貢献できること、感謝されること、人との温かい交流、困っている人を助けること。
- やる気を失うもの: 無視されること、感謝されないこと、自分の親切が利用されること、他者からの拒絶。
- 特徴: 温かく、思いやりがあり、他者のニーズに応えようと尽力します。人との関係性を非常に大切にします。
タイプ3:達成する人(The Achiever)
- モチベーションの源泉: 成功、評価、目標達成、有能であること。
- やる気を維持・向上させるもの: 明確な目標、成功の機会、成果への評価、競争、効率的な方法で物事を進めること。
- やる気を失うもの: 失敗、停滞、評価されないこと、無能だと感じること、目標がない状況。
- 特徴: 意欲的で、目標指向性が高く、成果を上げることに長けています。世間的な成功や評価を重視する傾向があります。
タイプ4:個性的な人(The Individualist)
- モチベーションの源泉: 自分らしさ、深いつながり、真実性、特別な存在であること。
- やる気を維持・向上させるもの: 自己表現、創造的な活動、感情を深く探求すること、ユニークであること、本物だと感じられる関係性や経験。
- やる気を失うもの: 平凡さ、誤解されること、感情を抑圧すること、表面的な関係、見捨てられること。
- 特徴: 感受性が豊かで、内省的、そして独自の感性を持っています。自分自身の感情や経験を深く探求し、他者との違いを大切にします。
タイプ5:調べる人(The Investigator)
- モチベーションの源泉: 知識、理解、能力、自立、プライバシー。
- やる気を維持・向上させるもの: 新しいことを学ぶこと、複雑な問題を分析すること、専門知識を深めること、静かで集中できる環境、自分の時間と空間。
- やる気を失うもの: 感情的な要求、プライバシーの侵害、無能だと感じること、知識や情報が不足している状況、圧倒される感覚。
- 特徴: 観察力があり、分析的で、知識欲が旺盛です。物事を深く理解し、自立して行動することを好みます。
タイプ6:忠実な人(The Loyalist)
- モチベーションの源泉: 安全、安心、信頼、準備、サポート。
- やる気を維持・向上させるもの: 明確なルールや指示、信頼できる人やシステム、困難に備えること、所属意識、忠誠心を示すこと。
- やる気を失うもの: 不確実性、危険、裏切り、権威への不信、最悪の事態を想像すること。
- 特徴: 責任感が強く、忠実で、安全を重視します。様々な可能性を考慮し、リスクに備える傾向があります。
タイプ7:熱中する人(The Enthusiast)
- モチベーションの源泉: 楽しさ、新しい経験、選択肢、幸福感、刺激。
- やる気を維持・向上させるもの: 多様な活動、新しいアイデア、楽観的な未来の可能性、自由、ポジティブな人との交流。
- やる気を失うもの: 痛み、制限、退屈、ネガティブな感情、将来への不安。
- 特徴: 楽観的で、多才、そして新しい経験を求めることに意欲的です。困難な状況でもポジティブな側面を見つけようとします。
タイプ8:挑戦する人(The Challenger)
- モチベーションの源泉: 強さ、公正、自己決定、影響力、保護。
- やる気を維持・向上させるもの: 主導権を握ること、公正さを守ること、困難に立ち向かうこと、自分の力で物事を動かすこと、他者を守ること。
- やる気を失うもの: 弱さ、裏切り、不公平、支配されること、自分の感情的な弱さを見せること。
- 特徴: 力強く、決断力があり、公正さを重んじます。他者を守るために立ち上がることもいといません。
タイプ9:平和をもたらす人(The Peacemaker)
- モチベーションの源泉: 内的な安定、平和、調和、受容。
- やる気を維持・向上させるもの: 平穏な環境、他者との調和、自分のペースで物事を進めること、重要なことへの関与、受容されていると感じること。
- やる気を失うもの: 対立、プレッシャー、無視されること、断片化された感覚、自分のニーズを無視すること。
- 特徴: 受け入れやすく、穏やかで、他者との対立を避ける傾向があります。調和を大切にし、周囲の状況に適応しようとします。
実践的な活用法:自分とチームのモチベーション向上へ
エニアグラムのタイプ別モチベーション傾向を理解した上で、それをどのように日々の生活や仕事に活かせるでしょうか。自分自身のモチベーション管理と、チームメンバーへの関わりの二つの側面から考えてみましょう。
1. 自分自身のモチベーション管理
- 自分の源泉を意識する: あなた自身のタイプ(または強く傾向を感じるタイプ)のモチベーションの源泉を改めて確認してください。何があなたを内側から動かすのかを理解することで、意識的にその要素を日々の活動に取り入れることができます。例えば、タイプ3であれば「達成」や「評価」が重要なので、小さな目標を設定し、達成したら自分を労うといった工夫が考えられます。タイプ5であれば「知識」や「理解」が源泉なので、仕事に関連する新しい技術や情報を学ぶ時間を意識的に設けることがモチベーション維持に繋がるでしょう。
- やる気を失う状況への対処: 自分がどのような状況でやる気を失いやすいかを知ることは、それを避ける、あるいは乗り越えるための対策を立てる上で重要です。例えば、タイプ7が退屈なルーチンワークでやる気を失いやすいなら、業務の一部に変化を取り入れたり、新しい視点から捉え直したりすることで対処できるかもしれません。タイプ1が間違いや不完全さで落ち込みやすいなら、完璧を目指しつつも「まずはここまで」と区切りをつけ、小さな成功を積み重ねる意識が役立ちます。
- 健全な状態でのモチベーション: エニアグラムのタイプは、健全な状態、通常の状態、不健全な状態によって現れ方が異なります。健全な状態では、そのタイプのポジティブな側面(ヴァーチュ)に動機づけられます。例えば、タイプ8は健全な状態では「無邪気さ(Innocence)」、つまり真実や公正さへの純粋な欲求に動機づけられます。不健全な状態では、恐れや執着(フィクセーション)に囚われ、モチベーションが歪んだ形で現れることがあります。自分自身の状態を観察し、より健全な動機で行動できるように意識を向けることが、持続可能でポジティブなモチベーション維持に繋がります。
2. チームメンバーのモチベーション理解と支援
チームメンバー全員のエニアグラムタイプを正確に知ることは現実的ではないかもしれません。しかし、それぞれのメンバーがどのような点に価値を置き、何に反応しやすいかを推測するだけでも、関わり方を変えるヒントになります。
- 観察と傾聴: メンバーがどんな時に活き活きしているか、どんな話題に強い関心を示すか、どんな不満を口にしやすいかなどを観察し、話をよく聞くことから始めます。例えば、改善提案をよくする人はタイプ1の傾向があるかもしれませんし、新しい企画にすぐ飛びつく人はタイプ7の傾向があるかもしれません。
- タイプに響く声かけと役割:
- タイプ1傾向の人: 「このプロジェクトの質をさらに高めるために、あなたの視点を教えてください」「正確に進めるために、確認をお願いできますか」
- タイプ2傾向の人: 「困っている人がいるのですが、手伝ってもらえませんか?助けていただけると本当に助かります」「あなたの貢献に感謝しています」
- タイプ3傾向の人: 「この目標を達成するために、あなたの力が必要です」「素晴らしい成果ですね、皆のモチベーションになりました」
- タイプ4傾向の人: 「この件について、あなたのユニークなアイデアを聞かせてください」「あなたの視点は私たちにとって新鮮です」
- タイプ5傾向の人: 「この件の背景について、詳しく教えてもらえませんか?」「資料を読んで、分析してもらえませんか」
- タイプ6傾向の人: 「計画通りに進めるために、リスクがないか一緒に確認してもらえませんか」「あなたの慎重な視点が重要です」
- タイプ7傾向の人: 「新しい方法を試してみませんか?」「このプロジェクトには色々な可能性がありますね」
- タイプ8傾向の人: 「この課題を解決するために、率直な意見を聞かせてください」「あなたがチームを引っ張ってくれませんか」
- タイプ9傾向の人: 「皆の意見がまとまるように、調整をお願いできますか」「チームの雰囲気を良くしてくれてありがとう」 これらはあくまで一例ですが、相手のモチベーションの源泉に寄り添ったコミュニケーションは、信頼関係を深め、自発的な協力を促す可能性を高めます。
- 多様な貢献を認める: チームには様々なタイプの人がいます。成果を出すことにやる気を感じる人もいれば(タイプ3)、チーム内の調和を保つことにやる気を感じる人(タイプ9)もいます。論理的な分析に貢献する人(タイプ5)もいれば、困難な状況でも皆を励ます人(タイプ7)もいます。それぞれのタイプが異なる形でチームに貢献していることを理解し、その多様性を認めることが、チーム全体のモチベーションを高める土壌となります。
まとめ:自分を知り、他者と「楽に」関わるために
エニアグラムを通じて自分や他者のモチベーションの源泉を理解することは、自己成長やチームでの協力を円滑にするための強力なツールとなり得ます。
自分自身のタイプが何に突き動かされ、何に意欲を失うのかを知ることは、より効果的な自己管理やキャリア選択に役立ちます。また、チームメンバーが異なる動機で行動していることを理解することは、彼らの行動を個人的なものと捉えすぎず、より建設的な関わり方を考える助けとなるでしょう。
エニアグラムは、人を型にはめるためのものではありません。それぞれの人が持つユニークな動機を理解し、受け入れることで、自分自身の可能性を広げ、他者とのより豊かで「楽な」関係性を築いていくための旅の地図として活用してください。この理解が、あなた自身とあなたのチームの「やる気」を、より良い未来へと導くヒントとなることを願っています。